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レポート6 「眼鏡好き好き催眠に挑戦」

レポート6 「眼鏡好き好き催眠に挑戦」

すっかり宴会芸の催眠術。バイト先での飲み会こそが我が戦場である。今回の飲み会ではリクエストがあった女の子に催眠術をかけることになった。以前かけて欲しいとの要望があったが、時間が合わずに断念してたのだった。
5円玉で誘導、手を胸の前で組んでもらって離れなくなるカタレプシー、成功。よし、良い反応だ。深化してから味覚変化にチャレンジすることになった。

催眠術師は誘導時、周囲の環境(例えば雑音)に注意を払わなければならない。それは外部からの雑音により被験者の集中力を切らさないためだ。被験者にとって心地よい環境設定こそがよりよい誘導への近道となる。
じゃー、目を閉じて私の言葉を頭の中でイメージしてください。

「誘導とか言って結城君がキスしようとしてるぞ!」
「やばいって。目つぶってたらやばいって!」
「唇がムチューってなってる、狙われてるって!」

そんな事しません。照れるでしょ。笑っている女の子と苦笑いの私。周囲の環境が騒がしいが飲み会だから当然だ。静かなほうが気持ち悪い。その時、観客の関心と話題が移った。今だ、この瞬間だ。誘導スタート。騒がしいのなら誘導により内面へと集中している状態を維持するのだ。

「では目を閉じて、集中してください。雑音が気になりません。耳に残りません」
「私の声がとても気持ちよく響いています。私の声だけがクリアに聞こえます」
「想像してください。あなたは岬にある真っ白な灯台の展望台に立っています」
「展望台にはとても気持ちの良い風が吹いています。穏やかな気持ちです」
「リラックスした状態です。ではこれから展望台の階段を下りてゆきましょう」
「10?1まで数えるので合わせて階段を降りてください。3回繰り返します」
「階段を降りれば降りるほど深い催眠状態へと移動できます」

数字のない暗示文もあるが、数字が持つ説得力が好きなのでこれでいく。前は20から順番に数えていたが、誘導しながらだと意外に難しいのだ。
14、深く降りてゆきます(あれ? 次13? 12?)となる。なったの。そこで数え慣れている10?1を基本にする。間違いにくいので術師にもやさしい。セットで3回繰り返す事にしてみた。単純な数字の繰り返しで反復効果も狙っている。

「10、9、8、…………3、2、1。もう一度」
「10、9、8、…………3、2、1。もっと深く」
「10、9、8、…………3、2、1。とても気持ちのいい状態です」
「あなたは今、心の奥深くに立っています。とても素晴らしい世界です」
「上も、下も、前も、後ろも関係ありません。すべてが思い通りになります」
「ではこれから5分、時間を差し上げます。自由な世界を楽しんでください」
「時間が立てばたつほど、深い催眠状態へと降りてゆきます。では5分後に…」

携帯電話を取り出し5分待つ。今回は手ごたえ有りだ。たぶん、入っている。周囲の会話にほぼ反応しないし、声をかけるとすぐに集中した状態に戻っていた。
5分経過。暗示開始。ウーロン茶が甘くなるのと、深化できる暗示も入れておく。そしてゆっくり覚醒。10?1を数えると頭がスッキリとして目が覚めるよ。

「おはようございます。どう? 頭痛くない?」
「うん、大丈夫。おはよー」
「ではこのウーロン茶を飲んでみて。どうかな。甘いでしょ?」
「んー。あんまり甘くないかな」
「そっか、でもね。コップを回すと甘くなるよ。見ててね、はい」
「やっぱり甘くない。ちょっと違う気はするけど…」

失敗。だが催眠状態には入っている。コップを追う彼女の目を見ればわかる。きっと味覚変化は合わなかったんだろう。さっさと気持ちを切り替えて次だ。次!
好き好き催眠術で眼鏡好きになるの? という観客の素朴な疑問に答えてみよう。深化の合図、指を顔の前で鳴らす。それでは、次の催眠術にいくね。そう目を閉じて。

「あなたが次に目を開けると何故だか眼鏡がとても気になります」
「となりの男(ちなみに私の事だ)が顔にかけている眼鏡がキラキラ輝いて見えます」
「思わず手したいほど綺麗です。だんだんその眼鏡が運命的な物に見えてきます」
「何も知らない他人が『普通の黒い眼鏡じゃないか』とあなたに言うかもしれません」
「でも関係ありません、あなたにはこの眼鏡の持つ本当の価値が理解できます」
「眼鏡が好きで好きでたまらなくなります」

megane.jpg
(黒い眼鏡の俯瞰風景)

覚醒。おはよう、気分どうかな。いける? そっかーそれは良かった。などと挨拶しながら眼鏡を外してみる。そっと彼女の目をみると眼鏡に釘付けだった。入ったね。成功だ。間違いない。確信できるよ、100%眼鏡にぞっこんだよ絶対。

「ん? 気になる? 手に持ってみるか」
「そう、そっとね。どうかな、綺麗でしょ。黒いフレーム」
「このレンズの曲線。まさに芸術品だよね。ステキだよねー」

ここぞとばかりに眼鏡に関するポジティブな情報を叩き込んでいく。好感度強化だ。彼女は眼鏡の虜。大事にそしてやさしく眼鏡を手に取り、熱い視線をそそいでいる。奪いに来た観客たちの手を跳ね除ける。お金では譲れない世界に一つだけの眼鏡だそうだ。眼鏡好き好き催眠成功。その瞬間、悪魔が囁きかけた。
彼女に眼鏡かけさせちまおうぜ。

「そうだ、かけてみなよ。眼鏡」
「うん」

二つ返事で眼鏡装着。何かのメーターが振り切ったのを感じた。
眼鏡っ子の愛らしさ、催眠術師の喜び、自分の眼鏡をかけさせる支配感が駆け巡る。限界知らずのメーターがぐるぐる回転する。ああ、催眠術師やっててよかった。彼女はどうやら眼鏡ごしの風景が美しく見えているみたいだ。ご満悦のご様子。

「ほら、あの照明みてごらん。キラキラしてるでしょ」
「ほんとだ、すごい」
「反射が綺麗だよね。光が立体的に見えるて綺麗だね」

満足頂いたようなのでゆっくり覚醒させて感想をうかがってみた。
周囲の雑音は気にならなかった。右耳から左耳にすーっと抜けていった。眼鏡装着後は世界がクリアに見えてとても面白かった。なかなかの評価だ。

その後、もう一人の女の子に誘導するも深化中に覚醒してしまった。なんだかグラグラとして気持ち悪くなったそうだ。集中力が足りなかったかな。誘導に関する安定感は今後の課題にしておこう。

これ書いていて思いついた。携帯のカメラで写真撮っておけばよかった。あと次の眼鏡っ子には視線誘導もいこう。私の目を見てごらん。ぐるぐる。

>>レポート7 「お箸が転がるとおもしろい催眠」



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